京都神社仏閣編 大原野神社(2019年06月)

場 所:京都市西京区大原野春日町1152

拝 観:無休

拝観料:無料

拝観時間:特に制限なし

二十二社の一社で、旧社格は官幣中社、現在は神社本庁の別表神社。「京春日」の別称があります。

延暦3年(784年)に桓武天皇が長岡京に遷都した際、后の藤原乙牟漏(ふじわらのおとむろ)が藤原氏の氏神である奈良春日大社の分霊を勧請し、大原野に祀ったのが始まりとされています。その後、嘉祥3年(850年)に左大臣藤原冬嗣を祖父にもつ文徳天皇が社殿を造営し、翌年の仁寿元年(851年)に勅祭が初めて行われました。

藤原氏一族で女の子が生まれると、中宮や皇后になれるようこの社に礼拝し、結果礼願通りの地位につくと行列を整えてお礼に参拝することが恒例となりました。

貞観18年(876年)に、清和天皇の女御となった藤原高子が参詣した際、在原業平もその行幸に同行し、「大原や 小塩の山も けふこそは 神世のことも 思出づらめ」(古今集)という歌を残しています。

寛弘2年(1005年)には、中宮彰子が父の左大臣藤原道長と共に、紫式部以下のお供を従えて行啓したそうです。

祭神は、本殿・第一殿に建御賀豆智命(たけみがづちのみこと)、第二殿に伊波比主命(いわいぬしのみこと)、第三殿に天之子八根命(あめのこやねのみこと)、第四殿に比賣大神(ひめのおおかみ)です。

神域は83000㎡もあり、内66000㎡が森林となっています。

JR向日町駅或いは阪急東向日町駅から、阪急バス「南春日町行」に乗車し、終点・南春日町で下車、徒歩7~8分。

終点でバスを降りて西に進むと道標があります。2つ目の道標を見て北西に少し広い道を進むと、右手に大原野神社の一の鳥居が見えて来ます。


一の鳥居と参道への石段及び神額。

石段を上がり切ると二の鳥居があります。

参道を進むと右手に春日乃茶屋という甘味処があります。そこを過ぎると右手奥に、奈良の猿沢の池を模して造られたと云われている「鯉沢(こいさわ)の池」があります。

池の周囲を一周することが出来ます。池には一杯の水連があります。

対岸には摂社若宮社があります。祭神は、本殿の第三神と第四神の御子神である水徳の神「天押雲根命(あまのおしくもねのみこと)」です。平成25年に修理が行われ、元禄14年(1701年)の棟札が見つかったことから、境内の中でも最も古い建物であることが分かりました。

池の中央には小島があり、朱塗りの小橋が架かっていて渡ることが出来ます。小島には、地主社の祠があります。

鯉沢の池とは反対側には「瀬和井(せがい)の清水」があります。清和天皇産湯の清水と言い伝えられ、多くの歌に詠まれています。

 「大原や 小塩の山の ほととぎす われに神代の ことかたらなん」  左大臣

 「大原や 小塩の山の 小松原 はや木立かれ 千代の蔭見ん」  紀貫之(後撰集)

 「大原や せがいの水を 手にむすび 鳥は鳴くとも 遊びてゆかん」  大伴家持

 「夜を寒み せがいの水は 氷るとも 庭燎(にわび)は春の ここちこそすれ」大江匡房

鯉沢の池を出てすぐ、本殿に向かって右手に「千眼桜」があります。「千眼桜」は、一重の遅咲きの白い花で、数日間しか咲かず幻の桜とも云われています。

更に参道を進むと、左側の石燈籠の横に「シイの大木跡」があります。

本殿の三の鳥居に向かって左手に、鹿がくわえた巻物から水が出ている手水舎があります。

三の鳥居を潜って本殿前へ。

右手に社務所があり、その奥に平成30年(2018年)の台風21号の影響で倒木した樹齢約450年のモミの木や被害にあった参集殿や渡り廊下があります。

正面に中門として、簡素な形式の薬医門を設け、左右に正面柱間五間として連子窓を嵌めた回廊を巡らしています。中門・東西回廊とも切妻造・檜皮葺の建物で、本殿と同じ時期の建築物と考えられています。

中門の左右には狛犬ではなく、春日神の使いが鹿であることから、神鹿(しんろく)が置かれています。

本殿は、同規模・同形式の一間社春日造社殿が四棟並んで建っており、間は板塀で連結されています。奈良の春日大社と同様に古い形式で、屋根は檜皮葺です。

本殿に向かって左側から見た景色。

本殿左側には少し大きめの敷地があり、左端に2つの歌碑と4つの末社があります。

歌碑には、手前が昭和・平成期の歌人・富小路禎子(とみのこうじよしこ)の歌が、奥が大正昭和期の歌人・植松壽樹(うえまつひさき)の歌が刻まれています。

末社は、八坂社・稲荷社・八幡社・祓戸社(はらえどしゃ)です。

そして一番奥の木立の中に神輿庫があります。

お参りを済ませ、元来た参道を戻ると、一の鳥居の手前右奥に、神相撲三百年記念碑とその向こうに相撲場があります。勝持寺からの脇道はこの相撲場に続いています。

2019年06月12日撮影。

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